油圧機器では、シリンダーや油圧モーターへ送る作動油の流量を調整することで、動作速度をコントロールします。
ただし、単純に流路を絞るだけでは、負荷圧力や油温、作動油の粘度などが変化した際に流量も変わり、シリンダー速度や機械動作が安定しないことがあります。
そのため、油圧用フローコントロールバルブは、使用圧力や必要流量だけでなく、圧力補償、温度・粘度条件、微量調整性、逆流制御などを含めて選定することが重要です。
このページでは、油圧制御で起こりやすい課題と、用途に適したフローコントロールバルブの選び方を解説します。
油圧シリンダーや油圧モーターは、供給される作動油の流量によって動作速度が変わります。
そのため、フローコントロールバルブで流量を調整することで、シリンダーの伸縮速度や油圧モーターの回転速度、工作機械の送り速度などをコントロールできます。
油圧シリンダーでは、一定時間あたりにどれだけの作動油を送り込むかによって、ピストンの移動速度が変わります。
供給流量が多ければ速く、少なければ遅く動くため、狙った速度で機械を動かすには流量の調整が必要です。
工作機械の送りや搬送設備、建設機械などでは、速度が安定しないと加工精度や操作性に影響する場合があります。
フローコントロールバルブを同じ開度に設定していても、必ず同じ流量になるとは限りません。
絞り部を通過する流量は、バルブ前後の圧力差にも影響を受けるためです。
例えば、以下のような条件変化によって流量が変わる可能性があります。
負荷が変わってもシリンダー速度を安定させたい場合は、単純な絞り弁ではなく、圧力補償機構を備えたフローコントロールバルブが候補になります。
油圧回路では、バルブそのものだけでなく、圧力、油温、作動油の粘度、回路構成などによって流量が変化します。
主なトラブルと原因例は以下の通りです。
| 課題 | 主な原因例 |
|---|---|
| シリンダー速度が安定しない | 負荷圧力の変動、差圧変動、供給流量不足 |
| 微速動作がぎくしゃくする | 低流量域での調整不足、摩擦、油温・粘度変化 |
| 設定した流量が変わる | 圧力、温度、粘度の変化 |
| 起動時に急に動く | 起動時の流量変化、回路条件、制御方式 |
| ハンチングする | 制御系の応答、圧力変動、バルブ特性 |
| 異音・振動が発生する | キャビテーション、流速過大、圧力変動 |
| 動作が遅くなる | 詰まり、油粘度上昇、ポンプ流量低下 |
流量が安定しない場合は、バルブだけを原因と決めつけず、ポンプ、負荷、作動油、配管、回路構成まで含めて確認することが大切です。
<-- -->油圧用フローコントロールバルブを選ぶ際は、耐圧性能だけでなく、実際の制御条件に合わせて確認する必要があります。
油圧回路は高圧で使用されることが多いため、まずバルブの最高使用圧力が設備条件を満たしているか確認しましょう。
常用圧力だけでなく、運転条件によって一時的な圧力上昇が起こる可能性もあります。
選定時には以下を確認します。
単に高圧対応の製品を選べばよいわけではなく、実際の油圧回路条件に適した仕様であることが重要です。
最大流量だけで製品を選ぶと、普段使う低流量域で細かな調整ができない場合があります。
特に工作機械の送りや位置決め、微速運転などでは、最小流量付近でどこまで細かく調整できるかが重要です。
以下を確認しましょう。
負荷が変化する設備では、バルブ前後の圧力差も変化します。
単純な絞り弁では、差圧が変わると流量も変わりやすいため、負荷変動があっても一定速度を維持したい場合は圧力補償型のフローコントロールバルブが候補になります。
| タイプ | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 絞り弁 | 開口面積を変えて流量を調整する | 負荷変動が小さく、簡易的に速度調整したい場合 |
| 圧力補償型 | 圧力変動の影響を抑え、設定流量を維持しやすい | 負荷が変化しても速度を安定させたい場合 |
| 比例制御型 | 電気信号に応じて流量を連続的に変更できる | 自動制御や可変速度制御を行いたい場合 |
作動油は、温度によって粘度が変化します。
低温時には粘度が高くなりやすく、暖機後には粘度が低下するため、同じバルブ開度でも流れ方が変化することがあります。
特に以下のような設備では、温度・粘度条件を確認しておきましょう。
選定時には、対応粘度範囲、使用温度範囲、温度補償機構の有無、推奨作動油などを確認することが大切です。
油圧シリンダーの往復動では、片方向だけ速度を調整し、反対方向はできるだけ抵抗なく流したい場合があります。
このような用途では、チェックバルブを組み込んだフローコントロールバルブが候補です。
例えば、以下のような使い方があります。
チェック付きタイプは、流量を制御する方向と自由流となる方向が決まっているため、取付方向も確認しましょう。
油圧用バルブには、インライン型、プレート型、マニホールド型、カートリッジ型など、さまざまな取付方式があります。
既存設備へ追加・交換する場合は、性能だけでなく取付寸法や接続規格も確認しましょう。
圧力補償式フローコントロールバルブは、負荷変動などによってバルブ前後の圧力差が変わった場合でも、設定した流量をできるだけ維持するための機構を備えたバルブです。
工作機械の送りや油圧シリンダーの速度制御など、負荷が変化しても動作速度を安定させたい工程で検討されます。
単純な絞り弁は、流路の開口面積を変えることで流量を調整します。構造がシンプルな一方、差圧が変わると流量も変化しやすい特徴があります。
一方、圧力補償式は、バルブ内部で絞り部前後の圧力差を一定に近づけることで、負荷変動による流量変化を抑えます。
| 比較項目 | 絞り弁 | 圧力補償式 |
|---|---|---|
| 構造 | 比較的シンプル | 圧力補償機構を備える |
| 負荷変動の影響 | 受けやすい | 抑えやすい |
| 速度安定性 | 負荷変動が小さい場合に向く | 速度を安定させたい場合に向く |
| 用途例 | 簡易的な速度調整 | 工作機械、精密送り、負荷変動のある設備 |
以下のような場合は、圧力補償式を検討するとよいでしょう。
油圧制御では、どのフローコントロールバルブを選ぶかだけでなく、回路のどこで流量を絞るかも重要です。
代表的な速度制御方式には、メータイン、メータアウト、ブリードオフがあります。
メータイン回路は、アクチュエータへ入る作動油の流量を絞って速度を調整する方式です。
ポンプからシリンダーへ供給する流量を直接制御するため、抵抗負荷を動かす場合などで用いられます。
一方、負荷に引っ張られて動くような条件では、アクチュエータが供給流量以上の速度で動こうとする可能性があるため、負荷特性を踏まえて回路を検討する必要があります。
メータアウト回路は、アクチュエータから排出される作動油を絞ることで速度を制御する方式です。
戻り側に抵抗を与えるため、負荷に引っ張られて動く場合でも速度を制御しやすいケースがあります。
ただし、回路条件によっては背圧が高くなったり、シリンダー内の圧力が増幅したりする可能性があるため、耐圧条件も確認しましょう。
ブリードオフ回路は、ポンプから供給される流量の一部をタンク側へ逃がし、残った流量をアクチュエータへ送る方式です。
回路条件によっては絞りによる損失を抑えやすい一方、負荷圧力が変化するとアクチュエータへ流れる量も変化することがあります。
どの回路方式が適しているかは、負荷の性質や速度安定性、発熱、効率などによって異なるため、油圧回路全体で判断することが重要です。
油圧用フローコントロールバルブには、手動で流量を設定するタイプと、電気信号によって自動的に流量を変更するタイプがあります。
一度設定した流量を頻繁に変更しない場合は、手動式が候補になります。
以下のようなケースに向いています。
運転条件に応じて流量を自動的に変更したい場合は、比例制御式が候補になります。
電気信号に応じてバルブ開度を連続的に変えられるため、以下のような用途で検討されます。
メーカーへ問い合わせる際は、使用用途だけでなく、実際の油圧回路条件を整理しておくと製品を選定しやすくなります。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 使用用途 | シリンダー速度制御、油圧モーターの回転制御など |
| 必要流量 | L/minなど |
| 使用圧力 | 常用圧力、最大圧力 |
| 負荷変動 | 負荷が一定か、大きく変化するか |
| 作動油 | 鉱油系作動油など、使用する油の種類 |
| 粘度 | 実使用時の粘度範囲 |
| 油温 | 最低・最高温度 |
| 制御方向 | 一方向か双方向か |
| 逆流 | 反対方向へ自由流が必要か |
| 制御精度 | どの程度速度を一定にしたいか |
| 調整方式 | 手動、電磁比例など |
| 取付方式 | インライン、プレート、カートリッジなど |
| 接続条件 | 口径、ねじ規格 |
| 設置環境 | 屋内・屋外、振動、温度条件など |
油圧用バルブは、最高使用圧力や最大流量だけで選ぶと、導入後に思ったような速度制御ができない場合があります。
最大流量に余裕があっても、普段使う低流量域で調整しにくい製品では、微速制御や細かな速度調整が難しくなることがあります。
通常運転時の流量と最小調整流量まで確認しましょう。
負荷が大きく変化する設備では、同じ開度でも流量が変わり、シリンダー速度が安定しない場合があります。
速度安定性が重要な工程では、圧力補償機構が必要か検討しましょう。
「始動直後は遅いが、暖まると速くなる」といった症状がある場合、作動油の粘度変化が影響している可能性があります。
使用油の粘度と設備の温度範囲が、バルブ仕様に合っているか確認することが大切です。
バルブ自体が適切でも、設置位置や回路方式が負荷に合っていなければ、期待した速度制御ができない場合があります。
アクチュエータの動作方向や負荷特性を踏まえて回路全体を検討しましょう。
フローコントロールバルブで流路を絞ると圧力損失が発生し、そのエネルギーの一部は熱となります。
常時大きく絞る回路では、油温上昇やエネルギーロスが大きくなる可能性があるため、必要以上の絞りになっていないか確認しましょう。
チェック付きフローコントロールバルブでは、流量制御する方向と自由に流す方向が決まっています。
逆向きに取り付けると、想定した方向で速度制御できない場合があるため、回路記号や製品仕様を確認して設置しましょう。
ここでは、フロコン大全で掲載している油圧制御向けフローコントロールバルブの例を紹介します。
製品を比較する際は、耐圧性能だけでなく、圧力補償、温度・粘度条件、微量調整性、チェック機構など、自社の制御課題に合った機能を備えているかを確認しましょう。
山本産業の「CVF型」は、チェックバルブにオリフィスバルブを組み合わせた油圧用フローコントロールバルブです。
高感度な流量コントロールを目的としており、位置決めや低速動作など、細かな油圧制御を行いたい工程で検討できます。
使用圧力は35MPa、粘度範囲は10~400cSt、使用温度範囲は-40℃~220℃とされており、幅広い油温・粘度条件に対応しています。
また、インサート方式を採用しているため、損傷した部品を交換しやすい点も特徴です。
油研工業の「FG/FCGシリーズ」は、圧力や温度が変化する環境でも、設定流量を一定に保つことを目的としたフローコントロールバルブです。
負荷条件や油温が変わる設備で、アクチュエータの速度を安定させたい場合に候補となります。
チェック付きタイプでは、一方向の流量を制御しながら、反対方向への自由流を確保できます。
不二越のFTタイプは、圧力補償機構に加えて温度補償機構を備えたフローコントロールバルブです。
油温変化による作動油の粘度変動の影響を抑えながら流量を調整したい場合に検討できます。
微少流量から大流量まで調整できる製品が展開されており、工作機械などの速度制御用途で候補になります。
ジェイテクトのHFシリーズは、圧力補償機構や温度補償機構を備えた流量調整弁です。
アクチュエータ駆動初期の油の飛び出しを抑えるジャンピング防止機構を備えており、工作機械などで滑らかな速度制御を行いたい場合に検討できます。
チェック弁を備えたモデルでは、反対方向への自由流にも対応できます。
油圧用フローコントロールバルブでは、「最大使用圧力○MPa」という仕様に目が向きがちです。
しかし、実際に使いやすいかどうかは、耐圧性能だけでは判断できません。
| 比較項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 最大使用圧力 | 油圧回路の圧力条件に適合するか確認する |
| 流量範囲 | 必要なアクチュエータ速度を実現できるか確認する |
| 最小調整流量 | 微速運転・低流量域で細かく調整できるか確認する |
| 圧力補償 | 負荷変動時にも速度を安定させやすいか確認する |
| 温度補償 | 油温変化による流量変動を抑えられるか確認する |
| 粘度範囲 | 使用する作動油や温度条件に適しているか確認する |
| チェック機構 | 反対方向への自由流が必要か確認する |
| 取付方式 | 既存設備に組み込めるか確認する |
| 調整方式 | 手動か自動制御か、運用方法に合うか確認する |
| 保守性 | 部品交換や調整を行いやすいか確認する |
自社設備で何が問題になっているのかを明確にし、その課題を解決できる仕様を持つ製品を比較しましょう。
油圧用フローコントロールバルブを選ぶ際は、以下の条件を確認することが重要です。
特に「シリンダー速度が安定しない」という課題がある場合は、フローコントロールバルブだけを交換すれば解決するとは限りません。
負荷条件、ポンプ流量、油温、作動油、回路構成まで含めて原因を確認したうえで、適したバルブを選ぶことが大切です。
油圧回路を流れる作動油の流量を調整し、油圧シリンダーの移動速度や油圧モーターの回転速度などを制御します。必要な速度に合わせて流量を調整する役割を持つバルブです。
圧力制御弁は、主に油圧回路内の圧力を調整・制限するバルブです。一方、フローコントロールバルブは流量を調整し、シリンダーやモーターなどの速度を制御します。役割が異なるため、油圧回路では両方が組み合わされることもあります。
負荷変動によってバルブ前後の圧力差が変わる環境でも、できるだけ一定の流量を維持したい場合に候補となります。工作機械の送りや、ワーク重量が変化するシリンダー速度制御などで検討されます。
片方向では流量を絞り、反対方向ではチェックバルブを通して比較的自由に作動油を流す構造のバルブです。油圧シリンダーの往復動などで、片方向だけ速度を制御したい場合に使われます。
作動油は温度によって粘度が変化するためです。油温が変わると絞り部を通過する流量も変化する場合があり、それがシリンダー速度に影響することがあります。速度安定性が重要な場合は、使用温度・粘度範囲や温度補償機構の有無を確認しましょう。
必要な流量を確保できず、アクチュエータの動作が遅くなる可能性があります。また、絞り部分で圧力損失が大きくなり、発熱やエネルギーロスにつながる場合もあります。必要流量と回路条件に合わせて適切に調整することが重要です。