比例フローコントロールバルブは、単純に流路を「開く・閉じる」だけではなく、電気信号などに応じてバルブ開度を連続的に変化させ、流量を調整できるバルブです。
冷却水や薬液、空気、工業ガス、食品原料などの流量を自動調整したい設備では、PLCやコントローラーからの指令によって流量条件を変更できるため、手動調整の自動化や製造条件の再現に利用できます。
ただし、「比例制御バルブ」であればどの製品でも同じように使えるわけではありません。対応流体、流量範囲、使用圧力、入力信号、駆動方式、流量フィードバックの有無などは製品によって異なります。
このページでは、比例制御に対応するフローコントロールバルブをメーカー・製品別に紹介し、用途に応じた選び方を解説します。
比例制御に対応する代表的な製品を、主な流体・用途別に整理しました。
| メーカー | 製品 | 主な流体・用途 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| SMC | JSP | 空気・水 | 電流値に比例して流量を無段階制御 |
| 東フロコーポレーション | FCV-M / MCV-M | 液体・温調用途 | 電動比例制御、2方弁・3方弁を選択可能 |
| 東フロコーポレーション | FCV-C | 薬液・純水 | 外部流量計からの情報を使った流量フィードバック制御 |
| CKD | SWD-T | 食品・バイオ・サニタリー工程 | アナログ入力による比例制御、CIP・SIP対応 |
| Bürkert | Type 2871 | 微小流量の液体・気体 | 直動式比例電磁弁、高い制御比 |
| Bürkert | Type 6223 | 水・比較的大きな流量 | 低差圧・大流量向けパイロット式比例電磁弁 |
| Festo | VEMD | 空気・各種ガス | センサー・制御回路を統合したマスフロー制御 |
例えば、空気・水を電気信号に応じてシンプルに調整したい場合と、薬液の実流量を測定しながら一定流量へ自動調整したい場合では、必要な制御方式が異なります。
まずは「何を流すのか」「どの程度の流量を制御するのか」「開度制御だけでよいのか、実流量まで一定にしたいのか」を整理して製品を比較しましょう。
比例フローコントロールバルブとは、入力信号に応じてバルブの開度を連続的に変化させ、流体の流量を調整するバルブです。
一般的なON/OFF電磁弁では、
全閉 ⇔ 全開
という2つの状態を切り替える制御が基本です。
一方、比例制御バルブでは、
小さく開く
↓
中間まで開く
↓
大きく開く
というように、入力信号に応じて中間開度を利用できます。
これにより、冷却水量や薬液量、空気量などを工程条件に応じて変更できます。
| 比較項目 | ON/OFF制御 | 比例制御 |
|---|---|---|
| バルブ開度 | 基本的に全開・全閉 | 中間開度を連続的に利用 |
| 流量調整 | 段階的 | 連続的 |
| 用途例 | 供給・停止 | 流量調整、温度制御、圧力制御 |
| 制御信号 | 接点など | 電流・電圧・通信など |
例えば冷却水ラインでは、温度が高くなったときだけ全開にするON/OFF制御ではなく、温度に応じて冷却水量を少しずつ増減させる制御に比例バルブを利用できます。
「比例バルブ」という名称から、入力信号が50%なら最大流量の50%が流れると考えがちですが、必ずしもそうなるとは限りません。
実際の流量は、
などによって変化します。
そのため、入力信号と「バルブ開度」の関係と、入力信号と「実流量」の関係は分けて考えることが重要です。
SMCのJSPシリーズは、電流値に比例して流量を無段階に制御できる比例制御弁です。使用流体として空気・水に対応しています。
直接配管形とベース配管形があり、設備構成に応じて選択できます。また、SUSと黄銅からボディ材質を選択できるほか、保護構造IP67を採用しています。
| 使用流体 | 空気・水 |
|---|---|
| 制御 | 電流値に比例した無段階流量制御 |
| 繰返し精度 | ±3%F.S.以下 |
| 感度 | 2%F.S.以下 |
| 管接続口径 | 1/8、1/4、3/8など(タイプによる) |
| 保護構造 | IP67 |
| シール材質 | FKM |
| ボディ材質 | SUS/黄銅 |
東フロコーポレーションのFCV-M・MCV-Mは、低温から高温までの液体流量を調整できる電動比例制御バルブです。
FCV-Mは2方弁、MCV-Mは3方弁となっており、用途によって使い分けられます。メーカー公式HPでは、-40℃~130℃の広い温度レンジ、全閉から全開まで約7秒の応答性、高精密・高分解能な制御を特徴として紹介しています。
| FCV-M | 2方弁 |
|---|---|
| MCV-M | 3方弁 |
| 使用温度範囲 | -40℃~130℃ |
| 全閉→全開 | 約7秒 |
| 駆動方式 | 電動比例制御 |
| その他 | 禁油仕様を標準採用 |
2方弁のFCV-Mは流路を絞って流量を増減する用途、3方弁のMCV-Mは流体の混合・分配などを含む温調用途で検討できます。
実際の選定では、必要流量と圧力差からCv値を確認し、用途に合う仕様を選びましょう。
FCV-Cは、薬液・純水用のフローコントロールバルブです。外部の流量計から現在の流量情報を受け取り、設定した流量になるようバルブ開度を自動調整するフィードバック制御に対応しています。
接液部にはオールフッ素樹脂を採用し、ステッピングモーターによって高分解能な流量制御を行う構造です。半導体洗浄装置における薬液・純水の流量管理などを想定して設計されています。
| 主な流体 | 薬液・純水 |
|---|---|
| 駆動方式 | ステッピングモーター |
| 接液部 | オールフッ素樹脂 |
| 制御 | 外部流量計の流量情報を利用したフィードバック制御 |
| 流量レンジ | 複数のフルスケール・流量レンジをラインナップ |
単に入力信号から開度を決めるだけでなく、実際に流れている量を見ながら補正できるため、入口圧力などの条件変化があっても設定流量へ近づけたい工程で検討しやすい製品です。
CKDのSWD-Tは、洗浄性・液置換性を考慮したサニタリー仕様の流量コントロールバルブです。
無菌性が求められる医薬品製造工程や、バイオ・高機能食品製造工程を想定しており、アナログ信号による流量比例制御に対応しています。
また、CIP・SIPを考慮した構造やプリセット機能などを備えているため、衛生性と自動流量制御を両立したい工程で検討できます。
| 制御 | アナログ入力による流量比例制御 |
|---|---|
| アナログ入力 | 0~10V DC、0~5V DC、4~20mA DCなど |
| プリセット | 複数パターンの設定に対応 |
| 洗浄・滅菌 | CIP・SIPを考慮したサニタリー仕様 |
| 主な用途 | 医薬品・バイオ・高機能食品製造工程 |
BürkertのType 2871は、バルブ開度を無段階に変化させる直動式2方比例電磁弁です。
小さなオリフィスを使用した微小流量制御に対応しており、メーカー公式HPでは、条件によって1mL/min未満の流量制御が可能とされています。
また、オリフィス径によって最大1:500の制御比を持ち、1台のバルブで広い流量範囲を制御できる点が特徴です。
| 方式 | 直動式2方比例電磁弁 |
|---|---|
| オリフィス | 0.05~2.0mm |
| 制御比 | 最大1:500(オリフィス条件による) |
| シート材質 | FKM・EPDMなど |
| コントローラー | Type 8605などと組み合わせて使用 |
微小流量域では、最大流量だけでなく最小制御流量・差圧・制御比を確認して製品を選ぶことが重要です。
BürkertのType 6223は、低差圧・比較的大きな流量を制御する用途を想定したパイロット式比例電磁弁です。
水用に特化しており、公式HPでは0.5~10barの圧力範囲と、制御比1:10が示されています。
Type 2871が微小流量を含む幅広い制御を得意とするのに対し、Type 6223は水を比較的大きな流量で制御したい用途で検討しやすい製品です。
| 方式 | パイロット式比例電磁弁 |
|---|---|
| 主な流体 | 水 |
| 使用圧力 | 0.5~10bar |
| 制御比 | 1:10 |
| シート材質 | FKM |
| コントローラー | Type 8605などと組み合わせて使用 |
FestoのVEMDは、気体のマスフロー制御を想定した比例流量制御バルブです。
温度センサーを含む電子制御回路を統合しており、流量を検出しながら比例バルブを制御します。Festoでは空気、酸素、窒素、アルゴン、CO2などの流量制御用途を紹介しています。
単純な比例弁というよりも、センサーと制御機能を組み合わせて気体流量を調整したい用途に適した製品です。
| 主な用途 | 気体のマスフロー制御 |
|---|---|
| 制御方式 | センサー・電子制御回路・比例バルブによる流量制御 |
| 対応例 | 空気、酸素、窒素、アルゴン、CO2 |
| 特徴 | コンパクト設計、高速な設定値変更への応答 |
比例制御バルブはメーカー名から選ぶのではなく、流体と必要な制御方法から候補を絞ると選定しやすくなります。
| 用途 | 重視するポイント | 製品例 |
|---|---|---|
| 水・空気の流量調整 | シンプルな無段階制御 | SMC JSP |
| 冷却水・温調液 | 使用温度、Cv値、位置制御 | FCV-M / MCV-M |
| 薬液・純水 | 耐薬品性、流量フィードバック | FCV-C |
| 食品・サニタリー工程 | 洗浄性、CIP・SIP、比例制御 | CKD SWD-T |
| 微小流量 | 最小流量、制御比、応答速度 | Bürkert Type 2871 |
| 水の比較的大きな流量 | 必要差圧、流量容量 | Bürkert Type 6223 |
| 気体のマスフロー制御 | ガス種類、流量レンジ、センサー | Festo VEMD |
まず、
流体
↓
最大・通常・最小流量
↓
上流・下流圧力
↓
必要精度
↓
制御方式
の順に条件を整理すると、適した製品を絞り込みやすくなります。
比例制御が可能でも、対応流体が用途と合っていなければ使用できません。
まず、
のどれを制御するのか整理します。
特に薬液や食品では、バルブ本体だけでなくシール・ダイヤフラムなどを含めた接液部材質も確認しましょう。
比例バルブを選ぶ際は、最大流量だけを確認するのではなく、通常流量・最小流量まで整理します。
最大流量には対応できても、通常運転時に開度がごく小さくなるような製品では、細かな流量制御が難しくなる場合があります。
実際に使用する流量範囲全体を安定して調整できるかを確認しましょう。
比例制御機能があっても、バルブ容量が使用条件に合っていなければ適切な流量調整はできません。
必要流量とバルブ前後の圧力差から、必要となるCv値・Kv値の目安を確認します。
容量が大きすぎると小さな開度変化で流量が大きく変わり、容量が小さすぎると全開でも必要流量を確保できない可能性があります。
比例バルブには、製品によってさまざまな制御方法があります。
代表的なものとして、
があります。
現在使用しているPLCやコントローラーから必要な制御信号を出力できるかを確認しましょう。
流量条件を高速で変更する装置と、数秒~数十秒単位でゆっくり温度を調整する設備では、必要なバルブの応答性は異なります。
一般的に比例電磁弁には高速応答を得意とする製品があり、電動比例バルブにはモーターで細かく位置を制御する製品があります。
単純に「速い方がよい」のではなく、対象となるプロセスの応答速度に合わせることが重要です。
比例流量制御には、大きく2つの考え方があります。
入力信号 → バルブ開度を変更
という制御です。
構成が比較的シンプルですが、上流圧力などが変われば、同じバルブ開度でも実際の流量が変わる場合があります。
設定流量
↓
流量センサーで実流量を測定
↓
設定値との差を確認
↓
比例バルブの開度を補正
という方法です。
流量そのものを一定に維持したい場合は、流量センサーを利用したフィードバック制御が有効です。
最後に、実際の使用環境へ対応できるか確認します。
などを確認し、流体と使用条件に適した仕様を選びましょう。
比例制御バルブには、電磁力を利用するタイプと、モーターを利用する電動タイプなどがあります。
| 比較項目 | 比例電磁弁 | 電動比例バルブ |
|---|---|---|
| 主な駆動方法 | 電磁力 | モーター |
| 応答性 | 高速な製品が多い | 製品・機構による |
| 開度調整 | 電流等により無段階調整 | モーターにより位置を制御 |
| 微小流量 | 得意な製品あり | 製品による |
| 液体の温調用途 | 製品による | 対応製品あり |
| 代表製品例 | SMC JSP、Bürkert Type 2871 | 東フロ FCV-M / MCV-M |
高速な流量変更が必要なのか、モーターによる細かな位置制御が必要なのかなど、工程に合わせて選択します。
比例バルブと似た用途で使われる機器に、マスフローコントローラー(MFC)があります。
比例バルブは、入力信号に応じて流路を変化させることで、流量を増減させる機器です。
バルブ単体では実際の流量を測定しない製品も多いため、必要に応じて外部の流量センサーを組み合わせます。
一般的なマスフローコントローラーは、
流量センサー
+
制御回路
+
比例バルブ
を組み合わせ、実際の流量を測定しながら設定値へ制御します。
すでに設備側に流量計やPLCがあり、それらを利用して制御する場合は比例バルブを組み合わせる方法が考えられます。一方、測定と制御を一体化したい場合はマスフローコントローラーも候補になります。
ON/OFF制御では実現しにくい中間流量を利用できるため、必要な工程条件に合わせて流量を変更できます。
PLCや制御システムと連携すれば、製品レシピや工程ごとに流量設定を変更できます。
手作業でバルブハンドルを調整する場合と比較して、作業者による設定差を抑えやすいこともメリットです。
比例バルブは、流量そのものだけではなく、温度や圧力などを一定にするための操作機器として利用することもできます。
例えば冷却工程では、
温度センサー
↓
温度コントローラー
↓
比例バルブ
↓
冷却水量を調整
という構成にすることで、温度変化に合わせて冷却水量を連続的に調整できます。
比例バルブは入力信号に応じて開度やバルブ出力を連続変化させますが、実流量は圧力差や配管抵抗などにも左右されます。
高精度に一定流量を維持したい場合は、流量センサーとの組み合わせを検討しましょう。
容量が大きすぎる比例バルブでは、小さな信号変化でも流量が大きく変わり、細かな制御が難しくなる場合があります。
制御系が補正を繰り返すことで、流量が設定値の上下を繰り返すハンチングにつながる可能性もあります。
バルブ開度が一定でも、バルブ前後の圧力差が変化すれば流量は変わります。
供給圧力が大きく変動する設備では、開度指令だけで目的流量を維持することが難しい場合があります。
比例制御できる製品でも、0~100%の全範囲を同じ精度で制御できるわけではありません。
特に微小流量が必要な場合は、最大流量だけでなく、最小制御流量や制御比を確認することが重要です。
入力される電流・電圧などの信号に応じて、バルブ開度を連続的に変化させられるバルブです。
ON/OFFバルブのような全開・全閉だけでなく、中間開度を使用できるため、流量の連続調整に利用できます。
4~20mA入力に対応した製品であれば利用できます。
ただし、4~20mAが「バルブ開度への指令」なのか、「設定流量への指令」なのかは製品によって異なるため確認が必要です。
開度指令の場合、入口圧力などが変化すると同じ信号でも実流量が変わる場合があります。
必ずしも一定にはなりません。
比例バルブの開度を一定にしても、上流圧力、下流圧力、流体温度などの条件が変われば流量も変化する可能性があります。
高い精度で一定流量を維持したい場合は、流量センサーで実流量を測定し、比例バルブへフィードバックする制御を検討しましょう。
製品によります。
SMCのJSPのように水・空気の両方に対応するシリーズもありますが、水専用、気体専用、薬液専用など流体が限定された製品もあります。
必ずメーカーが示す使用流体と材質適合性を確認してください。
薬液に対応した製品であれば使用できます。
例えば東フロコーポレーションのFCV-Cは、薬液・純水の流量制御向けとして展開されています。
薬液用途では、制御性能だけでなく、接液部の材質が薬液の種類・濃度・温度に適合するかを確認することが重要です。
比例フローコントロールバルブには、対応流体や制御方式の異なるさまざまな製品があります。
今回紹介した製品を用途別に整理すると、
という違いがあります。
ただし、製品名から先に選ぶのではなく、
流体
↓
最大・通常・最小流量
↓
上流・下流圧力
↓
必要な制御精度
↓
入力信号・通信方式
↓
必要な応答速度
↓
材質・温度・圧力
の順に条件を整理しましょう。
また、単にバルブ開度を比例制御したいのか、実際の流量そのものを設定値へ維持したいのかによっても必要なシステム構成は変わります。
高精度な流量制御が必要な場合は、比例フローコントロールバルブだけでなく、流量センサーやコントローラーまで含めて制御系全体を検討することが重要です。