工場では、原料の投入量や冷却水の循環量、薬液の供給量、圧縮空気・ガスの使用量など、さまざまな工程で流量を測定します。その際に使用されるのが、流量センサーや流量計です。
ただし、流量を測定できればどの製品でもよいわけではありません。水・油・薬液・スラリー・気体・蒸気など、測定する流体によって適した測定方式は異なります。また、配管径や流量範囲、必要精度、温度・圧力、接液可否なども確認する必要があります。
このページでは、工場で使用される代表的な流量センサー・流量計の種類と、それぞれの特徴、選定時に確認したいポイントについて解説します。
工場で使用される流量センサーには、電磁式、コリオリ式、超音波式、渦式、熱式など複数の測定方式があります。それぞれ測定原理が異なり、対応できる流体や流量範囲、精度、配管条件も異なります。
| 測定方式 | 主な対象 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| 電磁式 | 導電性のある液体 | 流路を妨げる構造が少なく、圧力損失を抑えやすい | 工業用水、薬液、排水、スラリー |
| コリオリ式 | 液体・気体 | 質量流量を直接測定でき、高精度な測定に向く | 原料計量、薬液、製品品質管理 |
| 超音波・クランプオン式 | 主に液体 | 配管外側から測定できる製品がある | 既設配管、薬液、食品、後付け測定 |
| 渦式 | 液体・気体・蒸気 | 幅広い流体に対応し、蒸気測定にも使われる | 蒸気、ユーティリティ、工業ガス |
| 熱式 | 主に気体 | 気体の質量流量測定に利用される | 圧縮空気、窒素、各種ガス |
| 面積式 | 液体・気体 | 構造が比較的シンプルで目視確認しやすい | 現場での簡易監視、装置内配管 |
例えば、水だから必ず電磁式、ガスだから必ず熱式というわけではありません。同じ水でも、必要精度、配管径、設置スペース、後付けの可否などによって適した方式は変わります。
流量センサーを選定するときは、最初に測定する流体の種類と状態を明確にすることが重要です。
工場で使用される工業用水や冷却水では、電磁式、超音波式、渦式などが候補になります。
選定時には、
などを確認します。
既設配管を加工したくない場合は、配管外側へ取り付けるクランプオン式も選択肢になります。
作動油や潤滑油、高粘度の原料などでは、粘度によって測定性能が変わるため注意が必要です。
候補としてはコリオリ式や、対象流体・配管条件に対応したクランプオン式などがあります。
特に高粘度液体では、カタログ上の最大粘度や使用可能な流量範囲を確認したうえで選定しましょう。
酸・アルカリなどの薬液を測定する場合は、測定方式だけでなく接液部材質が対象薬液に適しているかを確認する必要があります。
候補になる方式には、
などがあります。
薬液名だけでなく、濃度、温度、圧力などによって材質への影響は変わるため、実際の条件をメーカーへ提示して適合性を確認しましょう。
固形物を含む液体では、流路内に可動部や狭い部分があると、詰まりや摩耗が発生しやすくなります。
そのため、流路内に大きな障害物を設けずに測定できる電磁式などが候補になります。
ただし、スラリー濃度や粒径、導電率、流速条件などによって使用可否は異なるため、製品仕様を確認してください。
圧縮空気や窒素などの気体では、熱式、渦式、コリオリ式などが使用されます。
気体は圧力や温度によって体積が変化するため、
などを確認する必要があります。
工場のボイラーや加熱工程などで使用される蒸気の流量測定では、渦式などが候補になります。
蒸気の場合は、単純な流量範囲だけでなく、飽和蒸気か過熱蒸気か、使用圧力・温度はどの程度かも確認します。
圧力・温度補正が必要な設備では、補正機能や外部計測機器との連携についても確認しましょう。
電磁流量計は、導電性のある液体が磁界を通過するときに発生する起電力を利用して流速を測定し、流量を求める方式です。
電磁式は、原理上一定以上の導電率を持つ液体が必要です。
そのため、油など導電率が低い液体や、非常に低導電率の流体では使用できない場合があります。
また、電極・ライニングの材質や、配管内が満水状態になる設置条件なども確認する必要があります。
コリオリ流量計は、流体が振動する測定管を通過した際に発生するコリオリ力を利用して質量流量を直接測定する方式です。
そのため、原料の配合や高精度な計量など、製品品質に直結する流量管理で検討される方式の一つです。
高精度な測定ができる一方で、製品によっては電磁式などと比べて導入コストが高くなる場合があります。
また、
などを確認する必要があります。
超音波式には、配管の外側からセンサーを取り付けて流量を測定できるクランプオンタイプがあります。
配管を加工せずに設置できるため、既設設備へ流量監視を追加したい場合などに向いています。
製品によっては、水だけでなく油・薬液・高粘度液体などにも対応しています。
非接液だからどの配管でも使用できるわけではありません。
測定性能は、
などの影響を受ける場合があります。
導入前に、対象となる配管と流体が製品の適用範囲に入っているか確認しましょう。
渦流量計は、流路内に設置された柱状物体の後方に発生する「カルマン渦」の周波数が流速に比例する性質を利用して流量を測定します。
液体だけでなく、気体や蒸気まで測定できる製品があることが特徴です。
低流量域や高粘度流体では、十分な渦が発生せず測定が難しくなる場合があります。
また、配管振動や流れの乱れの影響も受けるため、メーカーが指定する直管長や設置条件を確認してください。
熱式流量センサーは、ヒーターなどで加熱したセンサーから流体へ奪われる熱量を利用して流量を測定する方式です。
主に、
などの流量測定に使用されます。
質量流量を測定できるため、工場内の圧縮空気使用量の監視や、省エネルギー管理などにも利用されます。
一方で、対象となるガスの種類や温度・圧力条件によって測定特性が変わるため、使用条件を確認する必要があります。
面積式流量計は、テーパ状の測定管内に設けられたフロートの位置から流量を確認する方式です。
構造が比較的シンプルで、電源を使用せずに目視確認できる製品もあります。
自動制御へ組み込む場合は、センサー出力や通信機能を持つタイプかどうかも確認しましょう。
工場で流量センサーを選ぶ際は、一つの仕様だけで判断するのではなく、以下の条件を順番に整理すると選定しやすくなります。
最初に確認するのは、何を測定するのかです。
など、流体によって適した測定方式は異なります。
さらに液体の場合は、導電率、粘度、腐食性、固形物の有無、気泡の発生しやすさなども確認しましょう。
流量センサーには、それぞれ測定可能な流量範囲があります。
最大流量だけを確認して製品を選ぶと、通常運転や低負荷運転時の流量が測定レンジの下限を外れ、正しく測定できない可能性があります。
そのため、
の3つを整理し、実際に使用する流量範囲全体をカバーできるセンサーを選ぶことが重要です。
必要な精度は、流量測定の目的によって異なります。
例えば、
では、必要な測定精度は同じではありません。
単なる監視用途で過剰に高精度な製品を選ぶとコストが上がる一方、原料計量などで精度が不足すると製品品質へ影響する可能性があります。
また、精度表記には、
などがあるため、「±○%」という数字だけで比較しないようにしましょう。
流量センサーごとに対応できる配管条件が決められています。
事前に、
などを確認します。
特に配管外から測定するクランプオン式では、外径・材質・肉厚などの配管情報が測定精度に関係します。
流量センサーは、流体へ直接接触して測定する「接液式」と、配管外部から測定する「非接液式」に大きく分けられます。
一方、接液部では腐食や付着、汚れなどへの対策が必要です。
食品・薬液など、接液部材質や衛生性を重視する工程では非接液式も有力な選択肢になります。
流量センサーには、使用可能な流体温度や圧力範囲が設定されています。
確認したい条件は、
などです。
食品・医薬品設備などで高温洗浄を行う場合は、通常の製造温度だけでなく、CIP・SIPなど洗浄時の最高温度も考慮する必要があります。
流量を表示するだけではなく、PLCやコントローラーへ測定値を送る場合は、出力・通信方式を確認します。
代表的なものとして、
などがあります。
特にフローコントロールバルブと組み合わせて自動流量制御を行う場合は、既存のPLC・コントローラーへ測定信号を取り込めるかを確認しましょう。
流量センサーとフローコントロールバルブは、どちらも流量に関係する機器ですが役割が異なります。
流量センサー・流量計は、現在どの程度の流体が流れているのかを測定するための機器です。
流量を測定するだけでは、基本的に流量そのものを増減させることはできません。
フローコントロールバルブは、流路の開口面積を変えることで流体の通過量を調整する機器です。
ただし、バルブ単体では現在の流量を把握できない製品もあります。
設定した流量へ自動的に調整する場合は、
流量センサー
↓
コントローラー
↓
フローコントロールバルブ
↓
流量が変化
↓
流量センサーで再測定
というフィードバック制御が使われます。
例えば設定値を10L/minとした場合、流量センサーが9L/minを検出するとバルブを開き、11L/minなら閉じる方向へ制御することで、設定値へ近づけます。
このように、「測る機器」と「調整する機器」を組み合わせることで、流量を自動的に安定させることができます。
用途に合った流量センサーを選んでも、設置方法が適切でなければ本来の測定性能を発揮できない場合があります。
エルボや分岐、バルブ、ポンプなどの直後では流速分布が乱れ、流量計の測定値へ影響する場合があります。
特に渦式や一部の流量計では、上流側・下流側に一定の直管長が必要です。
必要な長さは方式・製品・上流側の配管形状によって異なるため、メーカーが指定する設置条件を確認してください。
液体の流量測定では、配管内部への気泡混入が測定値へ影響することがあります。
そのため、
などを確認します。
液体用流量計では、測定部分の配管が液体で満たされていることを前提とする製品があります。
水平配管・垂直配管などの設置方向も含め、測定部に空気が残りにくい位置へ設置しましょう。
ポンプによる脈動やバルブによる流れの乱れが、流量センサーへ影響する場合があります。
流量が安定しない場合は、センサー自体だけでなく、ポンプ・フローコントロールバルブ・配管形状を含めた設置位置を確認することが重要です。
配管外から測定するクランプオン式では、配管情報の入力・設定が必要な場合があります。
などを正しく設定しないと測定誤差につながる可能性があります。
同じ流量測定でも、工場の種類によって重視される条件は異なります。
食品工場では、衛生性や洗浄性、異物混入防止などが重要です。
検討時には、
などを確認します。
既設の食品配管へ後付けしたい場合などは、流体へ直接接触しないクランプオン式も候補になります。
化学工場では、薬液の腐食性や温度・圧力、防爆エリアへの対応などが重要です。
接液式の場合は、電極・ライニング・シールなどの材質が対象薬品に耐えられるかを確認する必要があります。
腐食性の高い薬液では、配管外から測定する非接液式も選択肢になります。
半導体製造では、薬液・純水・超純水・プロセスガスなど幅広い流体が使用されます。
特に薬液・高純度流体では、
などが重要になります。
水処理設備では、大口径配管や排水、固形物を含む水などを測定する場合があります。
そのため、
などを確認し、電磁式や超音波式などから適した方式を選びます。
「水だから電磁式」「空気だから熱式」のように、流体の種類だけで製品を決定すると、実際の使用条件に合わない場合があります。
同じ水でも、
などで適した方式は変わります。
最大流量が測定範囲に入っていても、通常流量や最小流量が測定レンジを外れていると、日常運転時に正確な測定ができない場合があります。
最大・通常・最小の3条件を確認しましょう。
「精度±0.5%」と「精度±1%」だけを見て製品を比較するのは適切ではありません。
読み値基準なのかフルスケール基準なのか、どの流量範囲でその精度が保証されるのかなど、条件まで確認する必要があります。
カタログ上では高精度な流量センサーでも、ポンプやエルボの直後など流れが乱れやすい場所へ設置すると、想定した測定精度を得られない可能性があります。
製品ごとの推奨直管長と設置条件を確認しましょう。
薬液や洗浄液に対して接液部材質が適していない場合、腐食や膨潤、劣化によって測定性能の低下や漏れにつながる可能性があります。
本体材質だけでなく、電極、ライニング、シール、Oリングなどすべての接液部材を確認することが重要です。
流量センサーは基本的に「流量を測定する」ための機器です。
設定した流量へ自動的に調整する場合は、測定値をもとに流路を調整するフローコントロールバルブやコントローラーなどが必要です。
流量センサーを選定するときは、メーカーへ相談する前に以下の条件を整理しておくとスムーズです。
【確認項目】
特に「流体」「流量範囲」「配管」「温度・圧力」「必要精度」の5項目を明確にしておくと、候補となる測定方式を絞り込みやすくなります。
工場では、電磁式、コリオリ式、超音波式、渦式、熱式、面積式など、さまざまな方式が使用されています。
どの方式が適しているかは、測定する流体、流量範囲、精度、配管、温度・圧力などによって異なります。
クランプオン式の流量センサー・流量計であれば、配管外側へセンサーを取り付けて流量を測定できる製品があります。
既設配管へ後付けしやすく、流体へ直接接触しない点が特徴です。
ただし、すべての配管・流体へ対応できるわけではないため、配管材質、口径、肉厚、対象流体などの適用条件を確認してください。
使用できます。
コリオリ式や一部の超音波・クランプオン式、その他油に対応した方式があります。
ただし、油は種類によって粘度が大きく異なるため、実際の使用温度における粘度と流量範囲を確認したうえで選定しましょう。
接液式の場合は、対象薬液に対する接液部材質の耐薬品性を確認します。
また、
なども確認してください。
センサーを薬液へ接触させたくない場合は、配管条件に対応できる非接液式も候補になります。
厳密な使い分けはメーカーや製品によって異なりますが、実務上は近い意味で使われることがあります。
一般的には「流量センサー」が流量を検出する部分を指し、「流量計」はセンサーに加えて表示・演算・出力機能などを含む機器全体を指すことがあります。
製品を比較する際は名称だけではなく、表示器・変換器・通信機能まで含まれているかを確認しましょう。
流量センサーを設置するだけでは、基本的に流量は一定になりません。
流量センサーは現在の流量を測定する機器です。設定した流量を維持するには、
流量センサー + コントローラー + フローコントロールバルブ
などを組み合わせ、測定値に応じてバルブ開度を自動調整する必要があります。
工場で使用する流量センサーは、測定方式によって対応できる流体や設置条件が異なります。
選定するときは、
という順番で条件を整理すると、適した測定方式を絞り込みやすくなります。
特に重要なのは、「水だから電磁式」といったように流体だけで決めず、「流体×流量範囲×配管×精度×温度・圧力×メンテナンス条件」まで含めて比較することです。
また、流量を測定するだけでなく設定値へ自動制御したい場合は、流量センサーだけでなくフローコントロールバルブとの組み合わせも検討しましょう。